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秋の読書計画 [leggere -読書-]

今月の芸術新潮。【特集 須賀敦子の愛したもの】です。
須賀さんは1929年(昭和4年)生まれ、フランス留学中の24歳の時にはじめてイタリアを訪れて以降、イタリアと深く関わり、素晴らしい著書を残されています。
イタリアに関わる女性作家といえば、塩野七生さん(1937年生まれ)。ローマ人の物語をはじめ、数多く本を出版されています。今のように気軽に海外へ、特に女性が出て行くことが少なかった時代に日本を飛び出し、イタリアで過ごしたという共通点はあるものの、その視点は対照的です。塩野さんは古代ローマ、ルネサンスや偉人といった歴史の表舞台が中心だとすれば、須賀さんはその目で見て感じたこと、触れ合った人々、街に息づいているものを綴るエッセイが中心。淡々とした語りかたが、穏やかで優しくて、心の裏側にもすっと入り込んでくる須賀さんの文章は、秋の読書にふさわしい。
没後10年にあたる今年のこの秋に、こんな特集をされると、いつもは高いから立ち読み・・・な芸術新潮を衝動買いしてしまうじゃないですか。

081008a.jpg

今手元にある5冊のうち、須賀さんの著書4冊。
 地図のない道
 -
トリエステの坂道
 -
コルシア書店の仲間たち
 -
ヴェネツィアの宿

『ヴェネツィアの宿』に収められた”オリエント・エクスプレス”は特に印象に残っている1篇。
列車が到着したミラノ中央駅での描写-“ミラノの日常に埋もれている私には、これらのうつくしい人々の着ているもの、ふるまいのすべてに、凝縮されたヨーロッパそのものを見るように思った。”という一文にあらわれた、こういう彼女の眼差しが大好きです。

 須賀敦子のローマ 大竹明子著
須賀さんの記したローマをたどる、大竹明子さんの写真と文章による1冊。

塩野七生さんの著書は、ここ最近のものを除いてほぼ全て読破しています。昔のものは古本屋やネットを徘徊してまで入手して、貪るように読んだ時期がありました。塩野さんの描く偉人たちから歴史に思いを馳せて見るローマと、須賀さんの視線を追うローマは、光と影のように異なる印象。
『須賀敦子のローマ』で写真に添えて引用されている、『時のかけらたちと『ユルスナールの靴』は、この秋に読んでみたいと思います。

弱かったり、貧しかったり、不幸の影から逃れられなかったりする人々や、イタリアの歴史の日陰にも、心を動かされる何かを感じる須賀さんの本を読んで、来年の旅のことを考えるのも悪くないですし。

『ユルスナールの靴』の帯より
-きっちり足に合った靴さえあれば、どこまでも歩いていけるはずだ。-
須賀さん自身、”いつかはじぶんにぴったりと合うような、そんな道が開けるはずだ。”と信じて待ち”ときには呼吸しつづけることだけをみずからに課していたローマでの二年間”があったと語っておられます。
どんな靴が自分にあうのか・・・?私はまだ探し物が見つかりません。ま、そのうちに、いつか必ず?


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comment 7

fullcon

↑お茶屋さんの隣ですね。
by fullcon (2008-10-09 22:46) 

お茶屋

旅の準備に向けて、
こういった書物から想いを巡らす・・・
ホントにすばらしいです♪
by お茶屋 (2008-10-09 22:53) 

こうちゃん

ハードカバーですね、
僕もいつもハードカバーです。
どうも文庫はなじめなくて・・・
吉本隆明が文庫に入ったとき、ちょっとショックでした。
by こうちゃん (2008-10-10 01:09) 

pace

失礼とは存じ上げますが
ギンズブルグの「ある家族の会話」未読でしたら是非
by pace (2008-10-10 01:11) 

pace

追伸: 因みに細身がいいかな~(笑)
by pace (2008-10-10 01:14) 

echo

またヴェネチアに行きたくなっちゃう!
by echo (2008-10-10 13:36) 

Pace

>fullconさん
お茶屋さんとほんとに仲良しなんですね!
ノーベル物理学賞のニュースでは、お三方が共に受賞を喜びあっている姿に
とても感動しました。仲良きことは美しい!このブログで宜しければ、どんどん
お茶屋さんのお隣席確保してください。私は自分でnice!押せないので
身を引きます(笑)

>お茶屋さん
須賀さんのイタリアは、一般的な眩しくて華やかなイメージとは違う世界を
味わうことができます。せっかくの秋の読書なので、本の世界に入り込んで
思いっきり浸りたいなと思っています。影響されやすい単純な性格なので
割と簡単に空想(妄想?)できるんです(^^; お茶の世界にもかなり引き
込まれていますし!

>こうちゃん
写真の中の4冊は文庫本なんです・・・。上手く撮れなくてすみません(;;)
文庫本とハードカバーではページをめくるときの重みが違いますよね。
収納に困って文庫本しか買わないようにしていた時期もありますが、
やはりハードカバーのほうが読書の贅沢を味わえますよね。
よしもとばななさんの著書はイタリア語訳も出ていて、わざわざ友達に頼んで
買ってきてもらったのに、図書館に入荷された時にはちょっとショックでした。
吉本隆明さんの本は読んだことないので、お勧めがあれば教えてください!

>paceさん
須賀さんの本の中でも名前が出てきていたので気になってはいたのですが、
ナタリア・ギンズブルグは未読なんです。paceさんのご推薦とあらば、
この秋の読書計画リストに加えないわけにはいきません!
細身がお好みでしたか(^^; 脚フェチ=細身、お尻フェチ=豊満、が好み
という勝手なイメージがあったのと、paceさんの隣に薄い女は似合わない
とこれも勝手に思ってしまいました。

>echoさん
私もヴェネツィア行きたいです!!
中・南部イタリアが多く、ヴェネツィアには1度、それもリラ時代に行った
きりです。トリエステにも行ってみたいですし、来年は少し北も視野に入れて
旅の計画を立てようかな~と考えています。

by Pace (2008-10-10 23:55) 

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