マルタの碑 [leggere -読書-]
イタリア半島のつま先に浮かぶシチリア島からさらに南、地中海の真ん中あたりにマルタ島があります。
このマルタ島のカルカーラという小さな町にある外国人墓地。
その一角には日本海軍の慰霊碑が建てられています。
「大日本帝国第二特務艦隊戦死者之墓」と刻まれた墓碑。
大正7年6月竣工。そのわりに新しく見えるのは、第二次世界大戦時にドイツ軍の爆撃で砕かれ、
昭和48年に再建されたものだからだそうです。
私がこの墓碑の存在を知ったのは数年前のことです。
きっかけは、たまたま本屋さんで見つけた「マルタの碑―日本海軍地中海を制す」という本でした。
マルタ島にはカラヴァッジョの絵もあるし、いつか行きたいと考えていたので手に取りましたが
この時は序章を立ち読みし、”マルタ行くことになったらその前に読もう”と思って棚へ戻しました。
そして2005年秋、例によってイタリア行きを計画し、その折に念願のマルタ行きも決意。
本の事も思い出してはいましたが、未読のままばたばたと出発。それでもお墓参りだけはしてきました。
そして先日、やっと「マルタの碑」を入手し読み終えました。(遅)
こんな経験ありませんか?”そのうち読もう・・・”と記憶の片隅に置いたまま時間が過ぎ去ってしまう
ことが・・・。ってないですよね。本題に入ります。
1914年から1918年の4年数ヶ月に及ぶ第一次世界大戦。
その最中、英国からの要請により地中海へ艦隊を派遣した日本海軍。輸送船団の護衛と被雷艦船の
救出という後方支援が主な目的。このあまり目立つことのない裏舞台での活動であったにも関わらず
「地中海の守護神」とまで賞賛されるようになった経緯が描かれています。
艦の装備や艦隊の編成などについての記述は知識が足りず、想像しにくいところもありましたが
日本海軍の活動を軸にしつつ、大戦の流れやその中での小さいけれども感動的なエピソードなどを
交えて書かれているため難解な印象はありません。
地中海へ派遣された第二特務艦隊が活動の拠点としたのがマルタ島。飛行機で行った私でさえ、
降り立ったときの日差しの強さに”なんだか遠いところにきたな”と思ったような場所です。
いまさら遅いのですが、マルタへ行く前にこの本を読んでおけば墓標の前でもっと違う感慨を抱けた
のに・・・と大後悔です。
歴史としての第一次世界大戦を知るだけでなく、著者の言葉にある”当時の日本人の優しさ”とか
”健気さ”とか、知っておくべきことがたくさんあるように感じました。
以前の記事に書いた「日本人の背中」の中で”近代史こそ、今の日本を知る足がかり。それなのに、
曖昧にしか教えられていない”と著者が語っている一節をふと思い出しました。
そう言われて考えてみれば熟知しているとは全く言えない近代史の中で第二次世界大戦はまだしも、
第一次世界大戦は印象が薄い。明治と昭和にはさまれた短い大正時代の日本人の姿や世界との
関わりを知る上でも良い1冊でした。
ちょうど2004年のイタリア旅の記事を書き終えたので、マルタについての記事も少しずつアップして
いきたいと思います。外国人墓地への行き方・・・というか彷徨い方についてもそのときに書きます。
これはずるいよ~(笑)
行きたい~猫島
マルタ騎士団だしマルチーズだし素敵な街だし
関係ないけどサム・スペードも好きだし
by pace (2008-06-27 23:35)
へー、マルタに日本軍の特攻部隊行ってたんですねー。
知らんかったです。こういう負の歴史はしっかり知っておかねばと
思いながらもできてないですねー。反省。。。
by くろた (2008-06-28 13:55)
私もいつか行きたいと思ってるんです、マルタ島。
ヨーロッパは特に歴史的背景や宗教的背景をきちんと
理解しておいた方が旅の楽しみ方が違ってきますね。
このあとUPされるマルタの記事が楽しみです♪
by manzo (2008-06-28 21:21)
>paceさん
マルタ騎士団、外せませんよね!塩野七生さんの「ロードス島攻防記」で描かれた
騎士団の物語(こちらはマルタに移住する前の聖ヨハネ騎士団と呼ばれていた頃の
お話がメインですが)には激しく感動しました。
サム・スペード調べてみたのですが、「マルタの鷹」という小説の登場人物の名前のことですか?読んでみたいのでアマゾンのほしい物リストに追加しました!
>くろたさん
コメントありがとうございます。
原因と結果だけではなくて、2度の世界大戦の中で日本はどういう役割をしたのか、
どう世界と関わっていたのかということもきちんと知りたいと思いました。
でも、実際はなかなか難しいですよね。手の届く範囲から少しずつでも勉強できたら
いいなと思います。
>manzoさん
アジアとは全く異なる文化圏なので、背景を知らないと目に映っているものの意味が
きちんと理解できないこともありますもんね。
やはり事前に本を読んでおくべきでした・・・。
マルタの記事も旅の参考にして頂けるようなものを書きたいなと思います。
が、とにかく方向音痴の私の記事なので旅行記というより放浪記になってしまうと
思いますが、許して下さい(^^;
by Pace (2008-06-29 20:04)
マルタのことは、ほとんど知りません。お話の続きが楽しみです。
確かに日本の歴史は近代の解釈を巡って取りざたされる割には、学ぶ機会が少ないですね。
自ら紐解かなければ、自らの国の歴史を知ることも無いままに過ごしていく・・・
寂しいことだと思います。
by echo (2008-06-30 00:00)
>echoさん
デリケートすぎて、近代史の中でも特に世界大戦前後あたりのことは
あまり深入りしにくい雰囲気がありますよね。
でも、何があったかきちんと知らないままだと不用意な発言で誰かを
傷付けてしまうかもしれませんし、逆に毅然としているべき場合でも
萎縮してしまったりということにもなりかねないと思うと怖いです。
マルタは小さな島なのに歴史が長く、見所もたくさんあります。
少しずつ記事にしていきますので待っていて下さい!
by Pace (2008-06-30 22:33)
立派なマルタ島慰霊碑の御写真を見て感激してしまいました。今年は第一次世界大戦終戦90周年です。 日本は英米仏伊ルーマニア等とともに一応戦勝国でした。開戦後日英同盟に基づき日英連合軍がチンタオのドイツオーストリア同盟軍を攻略し、はるばる地中海マルタ島を根拠地にして日本海軍が英米仏伊の輸送船をドイツやオーストリアのUボートの無差別攻撃から守り抜いたのでした。また以外に知られていませんが、当時の日本海軍は太平洋からインド洋にかけてドイツ海軍の通商破壊戦から連合国の輸送船団を広範囲に護衛して欧州西部戦線への補給を支えたのでした。今もそうですが所詮世界は弱肉強食、当時の欧州列強のアジア進出から日本を守ろうと必死だった御先祖様達に深い敬意を覚えます。「負の歴史」なんてとんでもない話です。私は11月11日を戦勝記念日として個人的にお祝いし、チンタオや地中海で戦死された御先祖様達の冥福を祈るつもりです。
by ツシマ (2008-07-20 09:20)
>ツシマさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
慰霊碑は外国人墓地の一角にあったのですが、他のお墓と比べても良く手入れされていて綺麗でした。
「マルタの碑」では当時まだ豊かとはいえない状況の中で、一等国になれるよう、またそうなって恥ずかしくないようにと生きていた日本人の姿が書かれていて、そこから私も尊敬の念を抱きましたし、きちんと学ぶべき歴史の一つだと感じました。
by Pace (2008-07-20 21:20)